作者コメント:
あるカップルさん(ある方のキャラさん×自キャラ)のメルヘン小説を書くとか言い出してしまった関係で、
練習に自キャラの小説を書きかけてみたら、絵を先に描いてイメージ作りをしようとか思い立ちましたん。
絵はとりあえずオフェさん。
確かオフェとオフェの友達(雷ちゃん達)の関係を描くのが楽しかった時に書こうと思っていたものです。
がんばれヘタレ☆
冷たい海風と暗闇の中で、
地上から人目を避けるように掘り下ろした汚い木の扉に手を伸ばす。
ぎぃっという軋んだ音の後、
よどんだ空気と共に中から音楽とは言えないような
けたたましい音の濁流に飲み込まれる。
何度も通ってはいるが未だに慣れない雰囲気に、
ひとつ、苦笑をしてから表情を消し、中に入る。
外からは想像も出来ないような広い店内には札が舞い、
下品な笑い声や叫び声が飛び交う。
いくつもバーカウンターが並び、その上を下着同然の衣装を纏った女性たちが妖艶に体をくねらせて踊る。
風邪引かないでねっと踊り子にチップを渡し
、目的の場所を探して通り過ぎる。
何故かオレの顔を見た途端、慌てて顔を隠す数名の男達を訝しがりながら店の奥に進む。
中には蜂にでも追いかけられたように外走り去るやつもいた。
正直、彼らには申し訳ないが、こっちにしたら誰だったか覚えていない。
きっと、言いがかりを付けられて逃げるオレを追いかけてしつこく絡んだか、
ケンカの仲裁をした時に元気良く暴れてくれたか。
どちらにしろ、うっかりトラウマになるくらい殴ってしまったんだろうなというのはわかるのだが。
「いらっしゃい・・・・あら、探偵さん♪久しぶりじゃない。」
突然、声をかけられて振り返ると、店では結構、影響力のある女の子が抱きついてきた。
あまり抵抗して体に触れてしまうのもよくないので、軽く微笑んでから、引き離す。
「マイサさん。こんばんわ。あの・・・・・探偵って???」
普段は挨拶を口にして逃げるのだが、
自分が今まで向けられた事の無い呼び名に戸惑い聞き返す。
「きゃー。今日は構ってくれるのねv嬉しいーvv」
甲高い声を出した彼女を見て、しまった!!と思った時にはすでに遅く、
胸を押し付けたり頬にキスしてくれたり、思いっきりサービスしてくれたりする。
ど・・・・ど・・・・どうしよう・・・(汗)
「あー!!遅いと思ったら、女の子といちゃいちゃして何してんだよー!!」
さっきまで自分が目指していた奥の扉から、
目のくりっとした男が出てくる。
自分より年上のはずだが、顔が可愛いからか少年のように見える彼は、
オレとマイサさんの所まで走って来て、オレの腕を思いっきり引っ張る。
「いーやぁー!!
探偵さんが私に構ってくれることなんて無いんだから放さないわよー!!」
「音ちゃんは俺達と遊びたいの!!
マイサちゃんは後で俺が遊んであげるから離れてー!!」
両腕を引っ張られながら、
昔、大岡裁判でこういう話があったなーなんて思い出す。
結局、力の弱いマイサさんが放す形で、
男に扉の奥に引っ張り込まれる。
扉の向こうからは泣き叫ぶマイサさんの声が聞こえて、
当分この店にオレに関する妙な噂が増えるんだろうなと察した。
どうせ、オレの気持ちなんて考えずにまた、
この店に呼び出されるんだとは思うけど。
「音ちゃん!!もう、今日は仕事の打ち合わせでしょ!?
女の子と仕事とどっちが大事なの!!」
・・・・・・・・。こう詰め寄る、彼…「雷」ちゃんの普段の行動を思い起こし、
彼にだけはこんなことを言われたくないと思う。
彼の場合、メンバーの恋人だろうと何だろうと、
女の子を見たら手を出さずにいられないからだ。
「まぁまぁ、オフェンスが悪いんじゃないだろー?
この店の女、殆どがオフェのファンだしさーv」
オレより筋肉質の男・・・「雨」さんが急に立ち上がって、
オレの肩を抱きながら雷ちゃんをなだめる。
彼はオレの実父の部下として海賊になった人だ。
オレにとっては海図の読み方や航海術を教えてもらったりで先生のような存在だ。
ただ、何故か男のオレに色目を使う。意味はわからないが。
「ファンって・・・・・・・。あと、探偵って呼ばれたんだけど・・・・・。」
さっきからの意味のわからない言葉を口に出すと、
ぽりぽりとポッキーを食べていた他の男が返事を返してくれた。
髪の長い、殺人マニアの「光」ちゃんだ。
「ほら、音は黙ってたらマシだし、シャイだから、
この店の女の中では「抱きたい男No.1」なんだよ。
それと、探偵ってのは・・・・音の仕事を聞かれたんで、
はぐらかしてたら、いつの間にか「探偵」ってのが通ったんだよなー。
ほら、長いひらひらしたの着てるし、帽子被ってることが多いから。」
・・・・・「抱きたい」・・・・・・・「抱かれたい」ではなく???
というか、コート着て帽子を被ったら探偵って・・・・・どういう連想!?
「よかったな。音。喋らなかったり
笑わなかったらモテルぞ!いっそ死んだ方がモテるんじゃね?」
嬉しくない。
それは、全然嬉しくない!
「明後日の予定。はい。」
さっきまでノートパソコンに向かっていた男、
「風」さんがプリントアウトした予定を見せてくれた。
「センチョー、これでイケそう?」
今日集まったのは他でもない。
明後日、船でジェラルド国に送られる
大量の魔族を逃がす為の打ち合わせをする為だ。
ついでに送られる、他の謙譲物を彼ら
「雷光雨風」に譲ることで手伝ってもらう。
普段は、オレともう2人位で乗り込むのだが、
今回は用心をしなくてはいけない為、全員の予定を合わせる。
相手があの「ジェラルド」の「クイーンサファイア」だからだ。
あの用心深い王女の事だ。何をするかわからない。
もともと自分が予定を組んだものを
風さんに送っておいたものなのを、
今、他のメンバーに合わせたのだろう。
少し納得が行かない部分はあったが、
その為に先に行動を起こしておいたので大丈夫だろう。
「うん。これで。
今日、警察さんに頼んで明後日はお休みしてて貰うように頼んだから、
もしかしたら船に乗り込むまでは結構楽かもしれないよ。」
にっこり笑って告げたのに、オレ以外の4人の顔が引きつる。
「・・・・・今日、港町の中の警察が襲撃されたって聞いたけど・・・・
もしかして、音がやったのか・・・・?」
「しゅ・・・襲撃なんて、やだなー。
そんなわけ無いじゃん!!ホント!!
穏やかに頼んできたんだってば!!」
慌てて繕う。
「そ・・・・そういえば、建物は酷い有様だったらしいけど、
不思議と死亡者はいないって言ってたもんな・・・・・・。」
さすがだ・・・と言わんばかりに納得した顔で俺を見つめてくる。
「な・・・何よーっ。オレは話し合いに行ったんだって!!
で・・・・でもさぁ、ほら、後ろ手捕まれたりしたら
うっかり殴っちゃったりするじゃないv
その程度で・・・・・ね☆・・・・えへへ☆」
「・・・・・・・音・・・・・。お前普段、蚊も殺せないのに、たち悪いよ・・・」
「だから、お前は怖えぇんだよ。」
「けど、かっこいいよーv音ちゃんたった一人でやっちゃったんでしょ?
もっと、そういう面をどーんと出してワイルドにやった方がかっこいいよ。」
口々に何やら呟く4人。
そうか・・・・だから、この犯罪者4人が、
文句言いながらも最後の最後はオレに従ってるのか・・・なんて初めて理解する。
単なる事故なのに・・・・(ぐすん)
「と・・・・・とりあえず、明後日はよろしくねー!!!」
4人の雰囲気に耐えられなくなって、慌てて扉を出る。
「きゃー。探偵さーんv出てきてくれたのねーvv」
扉の前に待ち構えていた、マイサさんと、
何故か何人もに増えた女の子達に取り囲まれる。
「わー。ごめんー!!ごめんなさいー!!」
煩い店内のはずなのにはっきりと背後で呟く雷ちゃんの声が聞こえた。
「・・・・・・・前言撤回。やっぱり、音ちゃんは音ちゃんだ。情けねー。」
どっちにしろ、なんかどうしようもなく恥ずかしくて、ただひたすら走って店の外に飛び出した。